第一章 第二話 はじめての「目」の精密検査

向かった先は総合病院


不安の中で通された診察室は

「暗い」部屋だった

その暗さに
不要に不安が増していく


見たことのない機器が並び
一つずつ 機器の手順に従って検査を進める


目に空気を当てる検査
気球をジッと見る検査

いくつかの検査は 見覚えがあった
そう コンタクトを作るときにする検査だ


そして

いろんな検査のあと
最後に「視野検査」を受けた

それはこれまでのどれとも違っていた


半円球の機械に向かって あごを台座にのせる
片目でどれだけの範囲が見えているかを調べる


中心を見つめたまま
どこかが光ったら ボタンを押す

ただそれだけのことが
のちにこれほどまでに過酷だとは 思わなかった



まず 右目から始めた

一定の間隔で 次々とランダムに光が散る


光に合わせて
リズミカルにボタンを押す


時折 光らない瞬間がある
ずっと見つめていると 目がチカチカと揺れ始める

見えているのか 見えていないのか
わからない錯覚に陥る


初めての経験に どっと疲れが押し寄せた



次は左目だ


やり方はわかった
少し余裕が出てきて リラックスしようと努めた

けれど 元々右より視力が悪いせいか
始めから視界がにじんで 見えにくい


検査が始まって すぐに異変に気がついた
光る「音」はするのに 光が 見えない



ウィーン  



ウィーン 



ウィーン 



ウィーン 



音だけが 虚しく響く

けれど 目の前には何も現れない



角度がいけないのか

あごの乗せ方が おかしいのか


何か 致命的な間違いをしているのではないか



必死に試行錯誤を繰り返していると
ようやく 光が見えてきた


慌ててボタンを押す


これまでの空白を 埋めたくて



見えるだけ 必死に
何度もボタンを押した



ようやく 検査が終わった


検査の意味もわからず
状況も理解ができない

頭がまわらない


異常なほどの疲労感と
得体の知れない不安に

ひどい頭痛が 込み上げてきた




名前を呼ばれ 再び診察室に入る



「網膜剥離の手術を 受けましたか?」

「いいえ」

「そうですか。。。」


医師の言葉は
どこか遠くから聞こえるようだった


「網膜剥離の手術をしたような 傷があります
そのせいで 視界が欠けています
見えないのは そのせいです

あと 緑内障がありますね

紹介状を書くので
近くの病院に 行ってください」


そんなことを言われたのは覚えている
けれど それ以外は何を言われたのかは覚えていない

わからない話が
どこか 他人事のように聞こえた


「見えないのは 傷のせいです」
と 淡々と言われたその言葉に

「仕方ないですね どうしようもありません」
と あっさり突き放されたような気がした


自分の身に何が起きているのか 理解できないまま
私は ぼんやりとした意識で診察室をあとにした

コメント

タイトルとURLをコピーしました