凍天(しみてん)|陽だまり その7

福島の郷土料理に
「凍み餅」というのがある


「凍み豆腐」は 

豆腐を凍らせて熟成・乾燥させており
寒冷地の昔からの保存食である

ちなみに 西日本では
「高野豆腐」がほぼ一緒だとか


そして「凍み餅」は

その「凍み」の製法と同じで
餅を凍らせて熟成・乾燥させたもので

つなぎや風味のためによもぎなど
野草が入った餅で作った保存食だ


そしてそして「凍天」は
 
そのよもぎ入りの凍み餅を
甘いドーナツ生地で包んで揚げたものだ

名前の由来は
「凍み餅の天ぷら」だとか


実はこれ ちょっとした
福島市のソウルフードなのだ

見た目はドーナツで飾り気がないが
これがなかなか美味しい

お餅の中のよもぎがいい隠し味



もともと凍天がブームだったのは
東日本大震災以前のことだ

そう ちょうど母の闘病で
よく子供たちと実家にいた頃

当時福島に住んでいた義弟が
好んでよくお土産に持って来てくれた


手でおにぎりを握ったくらいの大きさで
なかなかのボリュームだが

子供達も大好きであっさり食べてしまい
気づくと2個食べていることもあった

味といい 感覚といい
アメリカンドッグに似ているのかも



福島に出かけた時には
必ずと言っていいほどお店に寄った

お目当てはもちろん凍天 
と杵つきのお餅の数々


みたらしや胡桃やずんだなどなど

詳細は忘れてしまったが
そんなものが色々あった気がする

その中でも私の一番は
杵つきのお餅の「胡桃餅」だった



「おばあちゃん子」だった私は

親が共働きだったので
休みの時は よく一人で祖父宅にいた


よく祖母と二人で買い物に出かけ
帰りに一緒にクリームソーダを飲んだり

時間がない時はお団子を買うのが常で
みたらしやあんこではなく

いつも決まって
くるみとごまとずんだだった


その時の胡桃の味と
ここの胡桃餅の味が似ていたから尚更

祖父宅は隣の県にあったのだが
似たものが食べれるのが嬉しかった


基本的に そこでしか味わえない
「地の味」が私の大好物

水のせいか空気のせいか
凍天もお餅も 格段美味しい



ところが 4年ほど前 
久しぶりに福島を訪れた時のこと


凍天を買おうと思ってお店を探したが
以前のお店は無くなっていた

震災があって以来 数年ぶりのことだった


「凍天」をネットで検索したら一件出てきたが
お店の「木乃幡」を検索しても何もなかった

仕方なく唯一見つけた
「販売所」に向かうことにした


窓口販売で購入してみたが
「木乃幡」の名前はなかった

殺風景な工場の窓口で買い
味気ない風景での久しぶりの対面だったが

変わらず美味しかったのが嬉しかった

聞いた話では潰れたとの噂もあったので
再稼働しているところを見て安心した



震災の後に久しぶりに訪れた街は
色々と変わっていた

東日本大震災が福島を大きく変えた


元々 福島原発は
福島の人たちが使う電力ではない

実は関東の人のための原発である


なのに当時は風評被害で
福島全域が矢面に立たされ散々だった

会津地方は山を二つ隔てるので
関東より放射線数値が低かったのに

「福島」だからという一括りで
関東より安全な食べ物も多く廃棄された


経験のないことが人を不安にし
被害者なのに苦しんだ人が多かった



元々の販売店であった「木乃幡」も
震災で苦労し 一度店を畳んだとか

原発による避難区域内にも工場があったり
風評被害などが原因のようだが


福島県内のスーパーの冷凍コーナーに
ここ数年「凍天」を見る機会が増え

着実に「凍天」が少しずつ
復活してきていることが見えて嬉しかった

「凍天」の復活が
「福島」の復活のような気がして嬉しい



そして最近 その「木乃幡」が
いろいろと出店していることを知った

また あの胡桃餅に会えるのが嬉しい
凍天の味も増えている


福島に行く機会を見つけて
直接店頭で凍天をしっかり買って

数年ぶりの揚げたての味を堪能したい


今は お取り寄せした凍天で我慢我慢

お取り寄せした凍天とあんこ凍天

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